簡易課税制度は、業種によって以下の5段階でみなし仕入率が定められています。売上の形態が、複数の業種にわたっている場合で、売上を区分しない場合は、主な業種区分により、みなし仕入率を適用します。 業 種 目 | みなし仕入れ率 | 第一種 | 卸売業 | 90% | 第二種 | 小売業 | 80% | 第三種 | 建設業、製造業、農林漁業等 | 70% | 第四種 | 他のどの業種にも区分されない事業 例えば、飲食店、金融保険業 | 60% | 第五種 | 不動産業、通信運輸業、サービス業 | 50% |
この業種ごとに売上を区分すると、節税になる場合があります。 具体的には、サービス業は5種でみなし仕入れ率は50%となっていますが、お客に対し物品を販売する場合には、この物品の販売は小売業となり、みなし仕入れ率が80%となります。 つまり、みなし仕入率の差によって、仕入税額控除を増やすことができ、その分節税となります。第2業種と、第5業種の2種類の業種を扱っている場合は、50%と80%の差が節税できます。具体的に例示すると次のようになり、18万円の節税となります。 例) | 年商4200万円のHP情報提供の場合(税込経理) | | 広告・情報提供売上 | ・・・3150万円 | | HPでの化粧品の小売売上 | ・・・525万円 | | HPでの化粧品の卸売上 | ・・・525万円 | | | | 区分しない場合 | 区分した場合 | 課税売上高に対する消費税 | 4,200万円×5/105=200万円 | | サービス提供の消費税 | | 150万円 | 化粧品小売業の消費税 | | 25万円 | 化粧品卸の消費税 | | 25万円 | 課税仕入高に対する消費税 | みなし仕入れ率は50% | みなし仕入れ率59%(注) | 控除消費税額 | 200×50%=100万円 | 118万円 | 納付する消費税額 | 100万円 | 82万円 |
| | (注) | 2種類以上の事業を営む場合の控除対象仕入税額計算の特例により算出 |
簡易課税は基準年度の売上が5,000万円以下でないと適用はできませんが、簡易課税が必ずしも有利であるとは限りません。 設備投資など、課税仕入額が増加する見込みの事業年度に関しては、簡易課税では、課税売上だけが計算の対象となるため考慮されませんが、原則課税の場合は、その仕入税額が税計算に反映されることにより納付税額が減少します。 決算時には簡易課税の場合と原則課税の場合を比較し、原則課税が有利と出たならば、簡易課税を取りやめることも検討すべきです。 例) | 不動産会社で設備投資した場合(課税売上割合は100%とする。) | | 課税売上高 12,000千円 | (うち 消費税 571千円) | | 課税仕入高 2,200千円 | (うち 消費税104千円) | | 設備投資額 30,000千円 | (うち 消費税1,428千円) | | (単位:千円) | | 簡易課税 | X0年度 | X1年度 | 合計 | 消費税 | 571 | 571 | 1,142 | 課税仕入税額控除 | 286 | 286 | 572 | 納付税額 | 285 | 285 | 570 |
| | | 原則課税 | X0年度 | X1年度 | 合計 | 消費税 | 571 | 571 | 1,142 | 課税仕入税額控除 | 1,532 | 104 | 1,636 | 納付税額 | -961 | 467 | -494 |
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原則課税適用の場合は、設備投資を行ったX0年は、961千円の還付を受けますが、X1年度は、逆に182千円多く納付することになります。しかし、2年の平均で見ると明らかに原則課税を選択する方が有利になります。消費税の税額の計算方法は、事業者が選択した場合、原則2年間の継続適用が求められています。また、売上の課税、不課税、非課税、免税の区分によって、仕入税額控除の額が変わってくるなど、手続き、計算面での注意が必要となってきます。 その注意ポイントをまとめると以下のようになります。 注意ポイント(手続き) | ① | 簡易課税を選択した場合(原則課税を選択した場合も同じ)は、2年間は継続して適用しなければなりません。 | ② | 消費税の原則課税、簡易課税の選択をする届出は、受けようとする事業年度開始の日の前日までに行わなければなりません。 | | 注意ポイント(計算) | ③ | 免税売上、非課税売上が多い場合には、仕入税額控除の計算において、課税売上割合に応じて仕入控除税額を計算するため、設備投資等による仕入税額を全額控除できない場合が生じるので、慎重にシミュレーションする必要があります。 |
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原則課税の場合、売上のすべてが課税売上げの場合には、仕入税額控除の全額が控除できますから、節税になりますが、サービス業の場合で、収入を得るための支出が給与という事業の場合は、逆に不利になります。それは、給与の支払いは、非課税仕入れとなっているからです。 結果として、納税額が増えてしまいます。 非課税仕入が多い業種(サービス業等)は、みなし仕入率が、実額の課税仕入の割合を上回るケースが見受けられますので、シミュレーションしてみることが必要です。 また、バブル崩壊後の景気変動や、規制緩和の動きの中で、業績不振や、分社化、営業譲渡等による業態の変化により、課税売上高が簡易課税の適用売上に該当するケースが増えています。これらのケースも、原則課税を適用し続けるのが最良の選択なのかを見直す必要があります 損害保険の代理店のようなサービス業の場合には、給与(人件費)の支払いが主な原価となっていますから、簡易課税を選択することで消費税の納付額が減少し節税になります。 例) | 代理店収入2100万円、給与等1470万円、給与以外の経費 630万円の場合 | | | | 原則課税 | 簡易課税 | 課税売上高に対する消費税 | 2100万円×5/105=100万円 | 2100万円×5/105=100万円 | 給与の金額1470万円 | 仕入税額・・・0円 | | 給与以外 630万円 | 仕入税額・・・30万円 | | みなし仕入れ率50% | | 100万円×50%=50万円 | 控除消費税額 | 30万円 | 50万円 | 納付する消費税額 | 70万円 | 50万円 |
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| 簡易課税制度のみなし仕入率は法人の業種によって決定されていますが、2つ以上の事業をおこなっている場合はそれぞれの業種ごとのみなし仕入率を加重平均して適用することとなります。 この計算について次のような特例があります。 1. | 特定一事業に係る課税売上高が75%以上の場合 | | 二以上の事業を営む事業者で、特定の一事業の課税売上高が全体の75%以上を占める事業者については、その75%以上を占める事業のみなし仕入率をその事業者の売上高全体に対して適用することができる。 | | | 2. | 特定二事業に係る課税売上高が75%以上の場合 | | 三以上の事業を営む事業者で、特定の二事業の課税売上高が全体の75%以上を占める事業者については、特定二事業のうちみなし仕入率の高い事業については、その事業に適用されるみなし仕入率をそのまま適用し、それ以外の事業については、特定二事業のうち低い方のみなし仕入率を適用することができる。 | | | 3. | 事業者が事業ごとに課税売上高を区分していない場合 | | 区分していない課税売上高については、その区分していない課税売上高に含まれる事業のうち最も低いみなし仕入率を適用して計算します。 |
今までのリース取引では、支払った金額が費用となるものがほとんどでしたが、平成20年4月1日以後に締結する所有権移転外リース取引の契約によって、その賃借人が取得したものとされる「リース資産」については、「リース期間定額法」により償却することとなりました。(法令48の2) これにより、リースであったとしても資産として管理することになりますが、消費税を見ると取得したことになり仕入税額控除ができます。 つまり、未払いの消費税を仕入控除して計算してもよいということで、納付する消費税がリース取引契約年度では節税になります。 例) | リース物件 2,000千円 リース期間 5年 リース料率 1.9% 月額リース料 38,000円(消費税 1,900円) リース総額 2,394千円 | (単位:円) | | 仕入税額控除の比較表 | | リース取引 | 資産計上 | 初年度 | 22,800 | 114,000 | 2年度 | 22,800 | 0 | 3年度 | 22,800 | 0 | 4年度 | 22,800 | 0 | 5年度 | 22,800 | 0 | 合計 | 114,000 | 114,000 |
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