① | 架空・水増し・仮装計上の有無 | | 病院・診療所の仕入は薬品材料代と人件費が大きなウエートを占めます。 したがって、人件費の水増しと薬品材料仕入に不正が集中する傾向があります。 税務調査で不正経理として大きな問題となるのは、架空・水増し・仮装計上の3点です。 | ② | 不審点の洗い出しの手法 | | 上記のような不正経理、または間違いを見抜くため、税務調査では仕入れについて次のようなアプローチで不審点を洗い出し、個別に適否を検証します。 ● | 事前のデータ収集 | | 事前に出入業者からの情報収集を行い、資料箋等からの取引の相手先・金額の規模等の概要を把握します。 標榜科目別の材料費割合等の標準データを参考にして、調査先の薬品材料費の割合に異常な点がないかチェックします。同時に、過去数年の材料比率の変動状況から不審な点がないかをチェックします。 | ● | 月別の推移と収入の対比 | | 月別の仕入高の推移を前期のそれと比較し、異常な仕入月と仕入金額を摘出して検討します。また、各月の仕入高と診療収入とを対比して仕入の適否を吟味します。 | ● | 仕入証憑書類の整備保存状況の調査 | | 仕入の納品書・請求書・領収証・薬品受払簿等の証憑・帳簿類の整備保存状況を確認し、薬品仕入の管理状況を把握します。 | ● | 仕入証憑書類の有無 | | 通常の仕入では、納品書・請求書・領収証が全くない取引は考えられないため、証拠書類の有無を調査し、証拠書類が欠落している場合には、その原因が管理上のものであるのか、それとも意図的な架空仕入であるのかが追及されます。証憑があっても住所や電話番号、社印等のない場合には、取引先や銀行を反面調査し、その信憑性を確かめます。 | ● | 臨時・小口・現金の仕入の信憑性調査 | | 臨時・小口・現金仕入は安易な不正経理の手段となりがちなため、相手先を確認するなどの反面調査によりその信憑性を確かめます。 | ● | 資産の混入の有無 | | 上記のような架空・水増仕入等の不正経理に関する調査以外にも、次のような仕入関連の税務調査があります。 |
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| | ③ | 個人消費・家事消費の有無 | ④ | リベート計上脱ろうの有無 | ⑤ | 仕入戻し・仕入値引き・仕入割戻し金額の計上の適否 | | 特に、簿外処理による金銭の使い込み、費消、および割戻しの期ずれ | ⑥ | 翌期首以降仕入の繰上げ計上の有無 | ⑦ | 在庫圧縮の有無 | | 利益を少なくする方法として、用いられるのが在庫金額の圧縮です。病院・診療所では、期末の在庫金額の決定は実施棚卸だけで帳簿棚卸は行わないところも多く、期中の仕入経理と独立していることから、在庫金額は比較的院内操作しやすい面があるといえます。 |
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2 委託費(検査・寝具・清掃・洗濯・器械補修)に対する税務調査のポイント |
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委託費の税務調査で確かめられる項目を列挙してみると、例えば次のとおりです。
● | 架空、仮装計上の有無 | ● | 家事使用等、業務外使用の有無 | ● | リベートや値引き処理等の妥当性 | ● | 委託費計上の根拠資料(契約書・納品書・請求書・領収書等)の整備状況 | ● | 期間計上の妥当性(翌期以降の損金となる前払部分の有無) |
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委託費の場合、検査委託や歯科技工委託のような医療収益に比例して、増加する変動費的なもの、給食委託や寝具委託、洗濯委託のように相当程度医業収益(特に入院収益)との相関関係が認められるもの、一方、月極めで保守委託契約を結んでいる器械保守委託料のように医業収益とは直接無関係な固定費的なものなど、発生形態はさまざまです。
したがって、税務調査の際には上記の項目につき委託費の発生態様それぞれに応じた調査がなされます。
① | 月極め・年契約の委託費の調査 | | 月極めや1年契約、場合によっては複数年契約の委託費の場合、まず契約書の提出を求められ、契約書の内容が吟味されます。契約書の相手先は実在し、委託業務の内容と金額は妥当であるか、実際の支払いと合っているか、また、数年契約を一括で支払っている場合には未経過分につき前払処理しているか確かめられます。 | | ② | 医業収益と比例するもの、相関関係があるもの | | ①のような契約に基づく定額の支払いではなく、委託量に応じて委託費を支払うケースでは、納品書・請求書・領収書等の証憑を中心に計上の妥当性が確かめられます。 その際には、先方への反面調査データや、医業収益とのバランスなどの分析データが活用され、異常点があれば重点的に調査されます。特に不正経理として問題となるのは、やはり水増し・架空計上および家事使用の混入といったところでしょう。 |
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