平成18年度税制改正の役員給与損金不算入制度の導入により、過大な役員退職給与の損金不算入規定が改定され、併せて役員退職給与の損金経理要件が廃止されました。
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(1) | 役員退職金のポイント |
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| ① | 役員退職金支給にかかわる法的手続き、会計処理が適正か | ② | 役員退職金の算定方法は妥当か | ③ | 支給内規が妥当に決められているか | ④ | 役員相互、使用人と比較して多くないか |
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(2) | 過大認定回避策 |
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| ① | 役員退職金適正額の算出基準 | | ● | 功績倍率法 適正額=退職時の適正給与月額×勤続年数×功績倍率 | ● | 1年当り平均額法 適正額=(比準法人の役員退職給与額÷比準法人の役員の在職年数)×在職年数 |
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| | ② | 疎明資料の収集 | | 過大認定を回避するためには、以下の疎明資料の収集する必要があります。 ● | 株主総会議事録 | ● | 取締役会議事録 | ● | 業務従事期間の経歴書 | ● | 退職に至る会社及び役員個人事情 | ● | 算定基準の計算根拠 | ● | 役員在職期間における会社への寄与分 | | 【会社への寄与分の検討事例】 | ● | 個人事業の法人成り時点における営業権・事業ノウハウの無償提供 | ● | 会社建物の建設に対する役員個人所有の土地の賃貸による相当地代固定に伴う借地権の自然発生 | ● | 銀行融資に関する会社への個人保証と永年にわたる個人資産の担保提供 | ● | 関連会社救済に関する私財提供、無償貸付け、債権の株式化・放棄等 | ● | 関連会社赤字に関する取締役退任や執行役員の就任時における分掌変更退職金の辞退 | ● | 個人取得の資格及びビジネスモデル等の会社への無償使用 |
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| | ③ | 退職金支給内規 法人が役員に対して退職金を支給するときは、まずその支給内規を設定し、それに準拠して役員退職金を支給するようにするべきです。このようにすれば、少なくとも特定の役員、例えば同族、非常勤役員等の退職金が多額に決められることはありません。 【注意点】● | 支給内規はしばし変更しない | ● | 退職金のプラスアルファは退職金の30%程度にとどめる | ● | 多くの特例を設けない |
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| | ④ | 過大性の判断 役員退職金は、まずその支給対象者を決めた後、それぞれの職種に応じて経営の関与度を考慮して退職金の過大有無が決定されます。その判断基準は次の通りです。 ●責任の度合 | … | 職務責任の度合で役員報酬が異なり、役員報酬をベースとして退職金が影響します。 | ●常勤・非常勤の別 | … | 職務の性格に応じて勤務度合が変動し、多いほど報酬、退職金を増加することができます。 | ●無報酬 | … | 退職金の報酬にリンクして支出が可能であるから、無報酬役員のつき退職金を支出することは容易ではありません。 | ●カラ報酬 | … | 上記とは逆に、現実に業務に従事していな名義役員に報酬を支出していれば、その報酬はカラであるから否認、これは退職金についても同様です。 |
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中小企業とって、役員退職金は、常時発生する費用ではありません。創業者やオーナー一族の退職金に当っては、高額な退職金が支給される場合が多くあります。業績の良い企業であればできるだけ早く損金算入させたいでしょうし、業績の悪い企業で、役員の退職年度が赤字決算であったり、資金繰りが苦しかったりすれば、損金算入時期を後の事業年度に持っていきたいと考えます。企業がそれぞれの立場で、役員退職金を後払いや未払いなどの支払方法で利用する場合の税務上の対策について説明します。
【未払い、後払いで注意が必要なケースと対応策】
(1) | 事業年度の中途で役員が退職し、退職した事業年度に退職金額を未払金として損金経理した場合 |
| 損金算入するには、次の2つの方法が考えられます。 ① | その事業年度内に臨時株主総会を開催して退職金額を決定する。 | ② | その事業年度内に役員退職金規定に基づいて取締役会等で退職金額を決定し支払い、支払った金額を損金経理する。そして次の株主総会等で承認を得る。 |
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(2) | 株主総会の決議が翌年以降に遅れた場合や、役員退職金を退職年度以降の年度で分割支給する場合 |
| 株主総会の決議が遅れたことや、分割支給したことについて合理的な理由が必要であることは言うまでもありませんが、これが繰越欠損金制度を理由とした利益操作の場合には、問題となります。 |
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(3) | 法人が資金繰り等の理由で退職金の総額を未払金に計上し、その後の年度で分割支給することが行なわれた場合 |
| 支給期間が長期になれば退職年金とされる恐れがあります。退職年金の法人税の取扱いは、一括して未払計上は認められておらず、支給した金額だけが支給した事業年度の損金に算入されます。従って、できるだけ早期に支払を完了させる必要があります。 |
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※ | いつまでに株主総会の支給決議を行えば税務上退職給与を支給したものとして取扱われるかについては、相続税法では相続財産とみなされる退職手当金について「被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの」(相法3条1項2号)まで該当する旨規定していますので、法人税法上も一応の目安となります。 |
監査役や非常勤役員・社外取締役とはいえ、退職給与は税務上、原則として損金の額に算入されることになります。
しかし、過大と認められる部分の額については損金の額に算入されません。そのために、それらの役員の退職給与が過大でないと主張できる証拠等の準備をすることにより、不相当に高額である認定を受けないように対策を講じておくことが必要です。
(1) | 税務上の留意点・対応策 |
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| ① | 職務の実態法人に対する貢献度が全くないような場合、例えば単なる名義貸し等による場合などは、役員退職給与の全額が損金算入の否認となります。 |
| ② | 功績倍率功績倍率による場合、相当な役員退職給与の額は、最終役員報酬×勤続年数×功績倍率により算出されます。 功績倍率をどのくらいにするかの判断が難しいのですが、一般的には1~3倍といわれています。 ※類似会社(統計資料等)と批准し決めるのがベストです。 |
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